Catlog総研 第18回レポーティング|防災の日特集、令和8年熊本地震で猫様に起きた変化(後編)

Catlog総研 第18回レポーティング|防災の日特集、令和8年熊本地震で猫様に起きた変化(後編)

Catlog総研
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本記事は、Catlog総研 第18回レポーティング「防災の日特集、令和8年熊本地震で猫様に起きた変化」の後編です。[前編はこちら]

前編では令和8年熊本地震の前後で、熊本にお住まいの猫様の元気スコアや睡眠スコア、食べる、水飲み、毛づくろい、歩く・走るといった日常行動の変化を分析しました。その結果、本震当日から翌日にかけて元気・睡眠スコアが大きく低下し、その後も余震が続く中で毛づくろいや歩く・走るの増加といった「警戒状態」のサインが1週間程度続いていたことが分かりました。

後編となる本記事では、引き続き同じ熊本群・全国群のデータを用いて、Catlog Boardで計測されるおしっこ・うんちの回数や量、そしてトイレの異常をお知らせするアラートの変化を見ていきます。特に、本震から約1週間後、熊本市が観測史上初の酷暑日を迎えたタイミングで再び見られた変化は、災害後の猫様の泌尿器の健康を考える上で重要な手がかりとなります。最後に、今回の分析全体を振り返りながら、災害に備える上で飼い主さんに気をつけていただきたいポイントをまとめます。


監修した専門家

Soshi Tanabe(@beeyan)

Soshi Tanabe(@beeyan)

博士(理学)。京都大学大学院理学研究科生物科学専攻を修了後、製薬会社にて研究職(非臨床安全性評価)に従事し、2023年4月にRABO入社。これまでに、神経科学及び毒性学領域(主にin vivo)での画像、行動、及び生体データを対象とした統計解析及び機械学習の技術開発を経験。猫様も好きだし、サルも好き。

渡辺 伸一

渡辺 伸一

イリオモテヤマネコの研究で博士号(琉球大学大学院理工学研究科)を取得。イエネコに世界で初めてデータロガーを付けたことが自慢。南極のペンギン類からアフリカのチーターの研究などを経て、現在は、瀬戸内海に棲むさまざまな動物を対象にバイオロギング研究を続けている。RABOでは、動物研究者の目線から機械学習チームの開発をサポートしている。

Keisuke Mashima (@massy)

Keisuke Mashima (@massy)

機械学習エンジニア。RABOの長期インターンを経て新卒入社。猫の行動の波形画像を大量に見ているため、波形画像から猫の行動がだいたいわかるようになった。今は実家の猫様と離れて暮らしているため猫に飢えている。GANやVAEなどの画像生成モデルがとても好き。


本震後はおしっこが減り、おしっこを我慢していた?

後編ではまず、Catlog Boardで取得できるトイレに関する変化を見ていきます。Catlog Boardでは、トイレの回数や排泄物重量を計測できるほか、排泄をうんちとおしっこに分類することで、うんち・おしっこ別に集計することが可能です。後編では、前編と同様に熊本群と全国群のデータを用いますが、おしっこやうんちは1日あたりの回数が少なく、日によっては0回となる猫様も少なくありません。猫様ごとの変化率(%)では極端な値になりやすいため、後編では猫様1匹あたりの数値について群平均で各指標を比較しました。

まず1日あたりのおしっこ回数(図18-4左上)を見てみると、本震後、数日かけて低下し、7/31に-11.2%の減少のピーク(地震前平均:1.93回、7/31:1.71回)を迎え、その後数日かけて回復に向かいました。1日あたりのおしっこの合計重量(図18-4右上)も同様の動きで、7/31に-22.1%の減少のピーク(地震前平均:85.4g、7/31:66.5g)を迎え、その後、緩やかに回復しました。

一方、1日あたりのうんち回数(図18-4左下)と重量(図18-4右下)については、本震後に一過性の上昇は見られるものの、おしっこのような地震前を大きく下回る減少は見られませんでした。

このように、うんちと比較するとおしっこの回数・量は、本震後1週間では地震前平均を下回る水準が続き、猛暑のピークと重なった8/3-4時点でも回復途上でした。前編の水飲み回数に関する分析で考察したように、本震直後は水飲み回数が減り、水分摂取量が少なくなっていたため、その影響を受けておしっこが減った可能性が考えられます。そのほかにも、余震が繰り返し発生することで、地震に対して不安を強く感じる猫様は我慢してしまう傾向にある、と言えるかもしれません。

※図18-4. 本震1週間前から2週間後までの1猫様あたりの1日あたりの平均おしっこ回数(左上)、おしっこ重量(右上)、うんち回数(左下)、うんち重量(右下)の日別推移。

猛暑が重なり、泌尿器トラブルのリスクが高まった可能性

猫様は環境変化やストレスによって膀胱炎などの泌尿器トラブルを起こしやすいことが知られており、おしっこの変化は特に注意して見ておきたいポイントです。Catlogでは、こういった変化があった場合に飼い主さんにいち早くお知らせするため、大きく二つのアラート機能を備えています。一つ目がトイレの入室回数に関するアラートです。これは、膀胱炎や尿道閉塞、下痢などで見られるように猫様がトイレに頻繁に入室している場合に発出されます。もう一つが排泄時間、すなわち猫様が排泄時にじっと静止している時間に関するアラートです。これは特に尿道閉塞のような「おしっこを出したくても出ない」といった場合に見られる排泄時間の増加を検知するものです。ここでは、これらのアラートの1日あたりの発生率と、それぞれのアラートで用いる指標の各群の平均値の推移を調べました。

まず、トイレ入室回数アラートの発生率(図18-5左上)を分析したところ、本震発生直後と8/3-4に一過性のアラート増加が見られました。1日あたりのトイレ入室回数の平均値(図18-5右上)を見ると、同じタイミングでピークが見られたほか、8/6以降にも複数ピークが見られました。このことから、本震やその後の気温上昇に伴い泌尿器や排泄のトラブルが増えている可能性があり、それは本震から1週間を過ぎても継続していたと考えられます。

排泄時間アラートの発生率(図18-5左下)も同様で、本震発生直後と8/3-4に一過性のアラート増加が見られ、特に1日あたりの排泄時間(図18-5右下)も含めて8/3-4に顕著に増加しています。本震直後に水飲み回数が減少したことと、8/3は気温上昇のピークであったことを踏まえると、地震による水分摂取量の減少とその後の気温上昇により、尿量が減少し尿が濃縮されたことで泌尿器トラブルのリスクが高まった可能性が示唆されます。

※図18-5. 本震1週間前から2週間後までの1日あたりのトイレ入室アラート発生率(左上)及び排泄時間アラート発生率(左下)、並びに1猫様あたりの1日あたりの平均トイレ入室回数(右上)及び平均排泄時間(右下)の日別推移。

まとめ

今回のCatlog総研レポーティングでは、令和8年熊本地震の本震前後の猫様の行動変化を分析しました。その結果、猫様の行動変化は大きく3つの局面に分けられることがわかりました。

まず、本震当日は食べる・水飲み・毛づくろいといった日常行動が軒並み減少し、元気スコアの低下として現れました。最大震度7を観測した本震による住環境や生活リズムの急変と、1日を通して続いた高頻度の余震が影響したと考えられます。

次に、生活環境が落ち着き始めた本震翌日以降も、猫様は日常に戻ったわけではありませんでした。睡眠時間や食事回数は数日で回復した一方、毛づくろい時間や歩く・走る時間、覚醒しているが特に動いていない時間(「くつろぐ」時間)は1週間程度にわたり平常時を上回りました。一部の指標が平常時の水準に戻った後も、度重なる余震に伴うストレスや警戒状態は続いていたといえます。

そして、猛暑のピークをはさんだ8/1〜8/4にかけて、睡眠の断片化とトイレ関連アラートが再び増加しました。飲水量の減少と高温が重なり、膀胱炎や尿道閉塞といった泌尿器トラブルのリスクが高まっていた可能性があります。実際、トイレ入室回数の平均値は8/6以降にも複数のピークを示しており、影響は本震から1週間を過ぎても残っていた可能性が示唆されます。

以上のことから、大きな災害後はまず飼い主さんと猫様の無事を最優先で確保いただいた上で、普段の生活環境に立て直していただくにあたって、猫様が安心して睡眠できる環境になっているかどうか、そしていつも通り水を飲んでおり、おしっこもしっかりしているかどうか、といったことに気をつけていただくことが大切だと考えられます。このような見守りにあたって、Catlogが、今回見てきたような猫様の行動の変化をより手軽に見守り、異変にいち早く気づくための一助となれば幸いです。

なお、今回の分析は、震災後もCatlogによるデータ収集が継続できた猫様、すなわちご自宅に留まり、停電やネットワーク通信断絶の影響が比較的軽微だった環境の猫様を対象としています。実際には、停電によりデータが取得できなかった猫様や、避難所やご自宅以外の場所へ避難された猫様など、今回の分析には含まれていない、より深刻な環境に置かれた猫様も数多くいらっしゃったと考えられます。そのため、今回お伝えした内容は熊本地震が猫様に与えた影響の一部であり、実際の影響はこれよりも大きかった可能性がある点にご留意ください。

改めまして、この度の令和8年熊本地震により被災された皆さま、そして猫様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い、皆さまと猫様の日常の回復を心よりお祈りしております。

すべては、猫様のために。

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ライター

Catlog総合研究所

Catlog総合研究所

「Catlog」シリーズを利用いただいている猫様から取得・蓄積された行動ログデータや体重・排泄データなどを活用した研究機関。 猫様の行動や習性をよりよく理解するきっかけとなる研究データをお届けしてまいります。


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